当院は猫の歯周口内炎の治療に全臼歯抜歯、および全顎抜歯を積極的に実施しています。

それは猫さんが劇的に楽になれるから。

「性格が穏やかになった」
「甘えてくるようになった」
「ガツガツ食べるようになった」
術後に嬉しい報告をいただくことも多いです。
 
抜歯という治療法を皆さんに知っていただきたくて再掲します。

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※これは2016年の記事を少し修正したものです。

猫の難治性歯周口内炎のご紹介です。

いきなりですが写真がこちら↓

イメージ 1

口の奥~歯茎にかけてや舌の縁が赤く、腫れています。


イメージ 2

臼歯を横から見てます。

歯茎が広範囲に真っ赤ですね。

歯石もついていますがそこまで酷くはないです。


口内炎は激しい痛みを伴います。

痛みのために
ヨダレが垂れる
食べづらくなる(食べ物を落とす、ドライフードを拒否する)
口をあける・触るのを嫌がる
口臭がきつくなる
口から出血する
飲み込むのが難しくなる
餌を口に入れると「ギャー!」と叫ぶ
食べに行くのに食べない(←食べたいのに痛くて食べられない)
体重が減る
などの症状が出ます。


原因は口腔内の細菌・ウイルス、免疫の異常などが考えられていますが、未だ明らかになっていません。


治療法は
歯石除去・歯周炎に関与した歯の抜歯
抗生剤の投与
ステロイド (継続 or 間欠) ・ (内服 or 注射)
消炎鎮痛剤
サプリメント
レーザー治療
などが挙げられます。

歯石除去と抗生剤の投与で治癒すれば単なる歯周炎だったと判断できます。
これで反応がなければステロイドやその他の治療を加えます。
しかしいずれも完治は難しく、継続して維持が目標となります。

完治を望める方法として「全ての臼歯の抜歯」、または「全ての歯を抜歯」があります。
 
これは細菌が付着する歯面を減らし、口腔内を衛生に保つ意味があります。

治療効果は全臼歯抜歯で60~70%、全顎抜歯で+10~20%と言われています。
最終的な治癒率は95~97%です。


歯を抜いて食べられるのかご心配と思いますが、全く問題ありません。
ドライフードもちゃんと食べられます。
むしろ痛みがなくなる分、たくさん食べてくれます。



では実際に全臼歯抜歯を行った前後比較です。

処置後10日目です。

イメージ 3

舌も含めて、口の中全体的に赤みが引きました。

劇的な変化ですが写真の加工はしていません(笑)

でもその位の変化ですね。



イメージ 4

見た目にはまだ赤みが残ってますが、赤みの質が違いますね。

抜歯後は歯肉を整形してから糸で縫います。
この糸に絡んだ食べかすに細菌が付着するためしばらく炎症(赤み)は続きます。
でも痛みは無くなってるんですよ。


この10日間は抗生剤以外は用いていません。
ステロイドも消炎鎮痛剤も無しです。
でも痛みは全く無くなったよう。
飼い主さんは「底抜けに食べている」と仰っていました。

顎の骨を削って抜歯をしているので相当に痛いはずなんです。
にも関わらずがっついて食べるようになりました。
・・・それほどに口内炎が痛かった、ということなんですよね。


口内炎なら何でも抜歯ではありませんが、積極的に検討すべき方法だと思います。

基礎疾患に猫エイズや猫白血病があっても改善を望めます。


『口内炎の痛みは手術より痛い』

口内炎を疑う症状がありましたら早めにご相談くださいね(^^)